WindowsやiPhoneやFacebook(SNS)を日本製に変えた世界観のものがたり【令和の独立島 ―和ネット圏の暮らし】

トピック

令和の独立島 ― 和OSと折り紙スマホと『結び帳』のある暮らし

 

「なあユウト、お前のその端末……やっぱ『折凛(おりりん)』か?」

山頂のカフェで風に揺れるのれんをくぐると、友人のドルが笑っている。ユウトは苦笑して頷いた。手にしているスマートフォンは、和紙のような質感と、風呂敷をたたむように折りたたんで収納できる国産スマホ『折凛』だ。

「うん。今や『和ネット圏』じゃ、これが標準だからな」

かつては世界中がWindowsやiPhone、Facebookなどに依存していたが、ある日、日本政府が「デジタル主権」を掲げて、大胆な転換を図った。外国のOSやSNSからの脱却、そして独自技術による生活基盤の再構築。それは、まるで明治維新以来のテクノロジー維新だった。


日本製 和OS ― 四季のあるデスクトップ

ユウトのノートパソコンは、日本製の「和OS」という国産オペレーティングシステムOSで動いている。画面には春には桜が舞い、秋には紅葉がはらはらと落ちる。カレンダーや天気だけでなく、地域の風物詩もAIが学習して背景に反映されるのだ。

「今日、飛騨高山では『一之宮水無神社の例大祭』って表示されてたよ」

ドルは、コーヒーの香りと共に『和OSノート』を開いて見せた。OS内蔵の国産ブラウザ『隈(くま)』は、広告ブロック機能と個人情報保護機能を完備し、アメリカの大手検索エンジンではなく、『言霊(ことだま)』という日本語特化型検索エンジンを使用している。

「外国語がまったく出てこないから、安心して子供にも使わせられるよ」

ドルは小学生の娘が『和OSキッズ』で俳句を学びながら絵を描いている動画を見せてくれた。YouTubeは見られないが、『映ノ杜(えいのもり)』という独自の動画SNSが代わりに普及している。そこでは顔出しや過激な演出は禁止され、投稿はAIによる審査を経るため、安心・安全だ。


折凛 ― 手ざわりの記憶

ユウトのスマホ『折凛』は、画面が布のようにしなる日本製の柔軟ディスプレイを採用している。和紙の素材をベースに、耐水・耐熱・自己修復機能を持たせた未来の道具だ。

操作は画面タッチだけでなく、「折る」ことで機能を呼び出すことができる。たとえば、スマホを三角に折ると通話モード、縦に折れば読書モード、横に折ると写真撮影が始まる。

「お年寄りにも使いやすいらしいよ。折り紙みたいで楽しいし」

通話アプリもLINEではない。代わりに『結び帳』というSNSが日本中で普及していた。


結び帳 ― SNSの、再定義

Facebookが「いいね!」を軸にした承認欲求の塊だったなら、『結び帳』はまるで交換日記のような温かさがあった。

「今日、近所の桜が一輪だけ咲いていたよ。春が待ちきれないらしい」

こんな一言を投稿すれば、フォロワーが「花見だんごの絵文字」や「温かいコメント」を添えて結び返してくれる。無理に拡散もせず、炎上も起きない。AIが内容を吟味し、攻撃的な言葉や嘘を排除するフィルターも働いていた。

結び帳では「投稿数」や「フォロワー数」ではなく、「心結び指数」という独自のスコアが表示される。これは、相手の心にどれだけ温かい余韻を残したかで決まるため、数を競う文化が根絶された。


外の世界とつながらない強さ

この「和ネット圏」は、外国製OSやサービスとの互換性がない。海外のSNSやニュースサイトには直接アクセスできず、GoogleやAppleのアカウントも使えない。だがそれこそが「独立」だった。

ユウトが『結び帳』に「夕暮れの風が冷たくなってきた。秋はもうすぐだ」と投稿すると、見知らぬ誰かが「葛湯(くずゆ)のレシピ」を結び返してくれた。SNSとは、本来こういうものだったのかもしれない。

ドルが静かに言った。

「世界の巨大企業の手から抜け出して、やっと人間らしい暮らしに戻れた気がするよ」


静かなる豊かさ

夕暮れ、山から下る道すがら、ユウトはふと振り返る。昔は、Windowsのアップデートにイライラし、iPhoneのバッテリーの減りにおびえ、Facebookでの誰かの自慢話に落ち込んでいた。

今は、季節の移ろいが背景に流れ、SNSが優しい言葉であふれ、スマホが折り紙のようにたたまれてポケットに収まる。

「便利さじゃなくて、“息ができるデジタル”が欲しかったんだ」

そう、ここには便利さよりも、心地よさがあった。
まるで、デジタルと和の文化が、静かに寄り添って生きているような——。

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