FF5の次元に消えた旅人ドル──ネオエクスデスと共に無へ挑んだもう一人の英雄

トピック

公式には語られなかった“もう一人の存在”

バッツたちの激闘の末、エクスデスは「無」の力を取り込み、“ネオエクスデス”へと変貌した。

その瞬間、世界は砕け、次元がねじれ、現実すら曖昧になっていった。

だが、誰も知らなかった。
その崩壊の裂け目に、ひとりの旅人が巻き込まれていたことを──

彼の名はドル
戦士でも、魔導士でもない。
ただの風来坊で、記録にも記憶にも残らぬ「空白の存在」だった。


◇存在しない者

「……あれ? 俺、生きてる?」

ドルが目を覚ました場所は、白と黒の波が交錯する「無」の世界だった。

時間も、重力も、音さえもなく、ただ存在そのものが希薄になる空間。
けれどドルは、なぜかそこに立っていた。

「なんだここ……夢か?」

──否。これは夢ではない。
無に飲まれた世界の“はざま”。
エクスデスが自らの身体と引き換えに創り上げた、絶対的な無の領域だった。

「……また、“残りカス”が紛れ込んだか」

その声が聞こえたとき、世界の端から闇が迫ってきた。
現れたのは、異形の存在──ネオエクスデス。

腕も顔も翼も混ざり合い、怒りも哀しみもない表情で、ただ存在を消し去ることのみを望む存在。

「おまえは誰だ?」

「ドル。……ただの通りすがりさ。お前みたいな奴に興味はないよ」

「すべての記憶 すべての存在、すべての次元を消し……
そして、私も消えよう……永遠に!!」

ネオエクスデスの叫びと共に、無限の無の波が押し寄せる。

「……やれやれ。めんどくせぇのに巻き込まれたな」

ドルは静かに腰に下げた“古びたオカリナ”を手に取り、口にくわえた。


◇音のない空間に響いた旋律

オカリナの音が、次元の空間に柔らかな波紋を生んだ。

「何だ、これは……?」

ネオエクスデスの動きが、一瞬止まる。

ドルは吹き続ける。
旋律は、不思議な力を帯び、存在が溶けかけた空間に“境界”を生んでいく。

それは「存在を忘れられた者」の旋律だった。
過去も未来もない、誰の記憶にも残らない、ただそこにあった命の証。

「なぜ、お前に……“無”が干渉できない……?」

「俺自身が“誰にも覚えられない存在”だからさ。
でも今だけは、俺自身の存在を奏でてみても……いいよな?」

ドルの身体が淡く輝く。
その光は、ネオエクスデスの放つ無とは違い、温もりを感じさせるものだった。

「すべてを無に帰す……私の邪魔を……するな!!」

「──させないよ」

ドルは最後の音を吹き鳴らし、自らネオエクスデスに向かって跳んだ。


◇記憶の果て

バッツたちがネオエクスデスを打ち倒した瞬間、すべての無は崩壊し、次元の狭間は閉じた。
世界は元に戻り、人々は平和を取り戻した。

だが──

レナ「ねぇ、みんな……“ドル”っていう名前、どこかで聞いたことない?」

ふと立ち止まったレナの問いかけに、仲間たちは顔を見合わせる。

ファリス「ドル? 誰だそいつ。あたしの記憶にはないな」

クルル「……うーん。どこかで聞いたような……
でも、はっきり思い出せない。夢で見たような気もするけど……」

バッツ「変な話だな。そんな名前のやつ、旅の途中で出会ったことなんてないだろ?」

レナ「……そう、だよね。私も、はっきりとは思い出せないの。でも……何か、心に引っかかるの」

四人はしばらく沈黙した。
風が草を揺らし、空の遠くで鳥が鳴いていた。

誰も知らない。
誰も覚えていない。

けれど、風のささやきの中に、どこか寂しげなオカリナの音が、確かに残っていた。


◇終わりなき“忘れられし英雄”

「……俺は、ここでいいさ」

消えゆく次元の片隅で、ドルはひとり、空を見上げていた。
身体は半透明になり、やがて何も残らなくなるだろう。

けれど彼の心は満たされていた。

「誰にも覚えられないってのも、悪くないよな」

風が吹く。
光が差す。
何もないはずの空間に、わずかに“音”が残っていた。

それは、誰にも知られぬまま、世界を救った者の“証”だった。

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