【物語】画面の右下にいる男の話
■プロローグ──右下に、何かいる
パソコンを使っているとき、ふと気づいた。
画面の右下、時計の横のあたりに…何かがいる気がする。
通知?
違う。
ウイルス?
いや、それも違う。
正確には、「誰かがそこにいる」気配があるのだ。
■最初は違和感だけだった
最初は「気のせい」だと思っていた。
だけど、夜中。Wordで作業していたとき、
“Ctrl+S”を押した直後、右下が一瞬だけ微笑んだ気がした。
スクリーンショットを撮ろうとしても、何も写らない。
でも確かに、そこに「目」があった気がする。
■彼の名前は“ドルさん”だった
ある日、気づいたら小さなメモ帳がデスクトップにあった。
中身は一言。
「やっと気づいたね。
僕の名前はドル。
ここにずっと住んでるよ。」
え?
誰?
なにこれ?
と、パニックになる私に、パソコンの右下からまた声がした。
「ファイル、1個戻しておいたよ。君が間違って消したやつ」
そのとき私は本当に、30分前に消したはずのテキストが復元されていることに気づいた。
■“交換条件”の話
「ありがとう」と私はキーボードを打った。
するとまた、メモ帳が更新された。
「いいってことさ。でも、今度は君の“時間”を1分もらうよ。
ドル式ルール、ってことで。」
それ以来、ドルさんはたまに助けてくれるようになった。
間違って閉じたファイルを開き直したり、動かないアプリを直したり。
ただし、そのたびに1分ずつ、私の時間が減っていく。
■そして、ある日ログイン時間が「0分」になった
2025年6月某日。
私のパソコンはログインしても即シャットダウンするようになった。
電源を入れるたびに、メモ帳が一瞬だけ開いて、こう書いてある。
「今週の時間、使い切っちゃったね。
ドル銀行は毎週日曜に時間が補充されるよ。
それまでおやすみ〜☺」
■エピローグ──右下に気をつけろ
今、あなたの画面の右下にも、誰かいませんか?
マウスを近づけると…何か、ほんの少しだけ動いた気がしませんか?
それが“ドルさん”です。
使いすぎないように、気をつけて。
あなたの時間も、減っていくかもしれませんから。
💡補足コラム:ドルさんの見つけ方(非推奨)
Windowsの「通知領域」に突然知らないアイコンが現れたら、それかもしれない
何もしていないのにファイルが復元されたことがあれば、もう手遅れ
“Ctrl+Z”を10回連打したとき、画面がほんの少し「笑ったら」、それは…
この記事は完全フィクションです。登場する人物・ソフトウェア・右下の住人はすべて架空の存在です(たぶん)。
次回「ドルさんとShiftキーの契約」「Alt世界からの脱出」予定。お楽しみに!
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